崖の上のポニョ

見てきました。すごい映画でした。どこがすごかった?と言われて答えに窮する種類のすごさ。
たけくまさんが

俺も観客も、よくわからないが「すごいもの」を見ている、という印象だけが強くあり、それゆえに途中で席を立って帰ったりはしなかったのでしょう。

と書いてらっしゃいましたけど、まさにその通り。どう反応してよいやらわからない、という点ではハウルなんか目じゃありません。


が、宮崎監督の映画や漫画をそれなりに追いかけ続けてきた身として一つわかったことは、船に対する妄念が爆発している、ということ。この映画、日本アニメ史上最高の船舶映画であるかもしれません。
押井守監督が「戦艦ものやるぞやるぞ」なんてあんまり言うもんだから負けず嫌いの宮崎監督が先手を打って海洋物にしたんじゃあるまいか、と邪推したくなるくらいには船と海の描写がすさまじい。というか、それ以外の要素はひょっとして商業上で必要だから入れただけのオマケなんじゃないか、と思えるくらい。海についてはポニョの魔法と絡んで派手な描写を期待していたので、わりと冷静に見ていられたんですけれど。
大型船の海を押し分ける船首波、高速小型船の派手な引き波、タップリとした船の揺れ、ブルワークの隙間から掃けていく水、ただの背景である貨物船の過度のディティール、発光信号器、ビルジキール、手漕ぎカッター、漁船、そしてポンポン船。
なんというか、とてつもなく地味なことで、たぶん書いても全然つたわらないんですけど「ああ!船ってそういう作りだよね!そう揺れるよね!そうやって航行するよね!そういう船員が乗ってるよね!」って納得力の固まりなんです。未来少年コナンのオープニングでカヌーが波を蹴立てて走っていく描写がありますが、あのレベルの手書き作画が延々と続く感じ、とでも言えばいいのか。


そういえば宮崎作品で船ってあんまり出てこないんですよ。「雑想ノート」

宮崎駿の雑想ノート

宮崎駿の雑想ノート

では船にもそれなりに触れていたのに。アニメで印象に残っているところでは

  • コナンのバラクーダ号とガンボート
  • ホームズの英国戦艦
  • ハウルの沈没戦艦

くらいかな。軍艦はどれも沈没、という悲惨な最後で。飛行機はたくさんあるし、各種車両もたくさんあるけれど、やっぱり船は少ない。今回はその鬱屈した思いが、海を題材にしたことで大爆発*1してしまったのでは・・・ということでわたしの結論。


崖の上のポニョの作画面の主役は、船舶と海。


もう一回見に行こう。こんどはツレとふたりで。

*1:意識か無意識かわかりませんけど